甘やかし婚 ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「本当に、ごめんなさい……もうこんな真似はしないから」
「沙也、なにを悩んでる? 最近ずっと思いつめた表情をしていただろう? 不満も不安も、ひとりで抱え込まずになんでも話してほしい。俺の知らない場所でお前が泣くのは耐えられない」
「――郁と悠さんの会話を聞いて不安になったんですって」
穏やかな飯野さんの声が割って入り、郁さんが私の顔を覗き込む。
「兄貴と俺の……?」
「ほら、続きは自宅できちんとふたりで話し合え」
風間さんがパンパンと手を叩いて、私たちをドアへと追いやる。
「そうだな……沙也、帰ろう」
郁さんが私の体を解放し、右手を私の左手にしっかりと絡める。
「飯野さん、風間さん……ご迷惑をおかけしてすみませんでした。ありがとうございます」
「……ふたりとも悪かった。連絡をくれてありがとう。保、この料金はきちんと請求してくれ」
風間さんと飯野さんは優しく微笑んで手を振ってくれた。
「倉戸さん、次に家出したくなったときは事前に連絡して。迎えに行くわ」
「そんな事態には二度としない」
どこか仏頂面の郁さんが私より先に返答する。
改めて感謝の気持ちを込めてふたりに頭を下げ、私は郁さんと店を後にした。
帰りのタクシーの中で郁さんにどう話を切り出そうかと悩んでいた。
郁さんは黙ったまま私を見ようとはせず、ただずっと強く指を絡めている。
「沙也、なにを悩んでる? 最近ずっと思いつめた表情をしていただろう? 不満も不安も、ひとりで抱え込まずになんでも話してほしい。俺の知らない場所でお前が泣くのは耐えられない」
「――郁と悠さんの会話を聞いて不安になったんですって」
穏やかな飯野さんの声が割って入り、郁さんが私の顔を覗き込む。
「兄貴と俺の……?」
「ほら、続きは自宅できちんとふたりで話し合え」
風間さんがパンパンと手を叩いて、私たちをドアへと追いやる。
「そうだな……沙也、帰ろう」
郁さんが私の体を解放し、右手を私の左手にしっかりと絡める。
「飯野さん、風間さん……ご迷惑をおかけしてすみませんでした。ありがとうございます」
「……ふたりとも悪かった。連絡をくれてありがとう。保、この料金はきちんと請求してくれ」
風間さんと飯野さんは優しく微笑んで手を振ってくれた。
「倉戸さん、次に家出したくなったときは事前に連絡して。迎えに行くわ」
「そんな事態には二度としない」
どこか仏頂面の郁さんが私より先に返答する。
改めて感謝の気持ちを込めてふたりに頭を下げ、私は郁さんと店を後にした。
帰りのタクシーの中で郁さんにどう話を切り出そうかと悩んでいた。
郁さんは黙ったまま私を見ようとはせず、ただずっと強く指を絡めている。