甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「……本当にごめんなさい、心配をかけて」


「いや、余程の理由があったんだろう? 沙也、俺はお前になにをしてしまった? 頼むから教えてほしい。お前に関わる出来事はすべて知っておきたいんだ」


髪を撫でる大きな手と力強い声に息を呑む。

正直に話すのはやはり怖いし、覚悟がいる。

それでも逃げていてはなにも変わらない。

きちんとお互いに向き合って気持ちを伝えないとただすれ違うだけだ。

私は郁さんを心から愛している。

叶うならずっと一緒に生きていきたいと願うほどに。

飯野さんと風間さんの言葉に背中を押され、私は彼から少し体を離して、事の次第を説明する。

彼は目を見開き、驚きながらも黙って最後まで耳を傾けてくれた。


「――まさかそんな誤解をさせていたなんて……」


「え……」


「俺は子ども欲しさとイメージ回復だけで沙也と結婚したわけじゃない」


「郁、さん?」


「お前が俺と初めて言葉を交わした日に言っただろ。お前を甘やかしたいしお前の全部を俺のものにしたいと。あれは全部本心だ……俺はずっとお前が好きだった」


衝撃的な告白に息を呑む。


……ずっと?


聞きなれない単語に瞬きを繰り返す。
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