甘やかし婚　　　～失恋当日、極上御曹司に求愛されました～
「お前に初めて会ったのは、髪が絡まった日じゃない。俺は半年くらい前から沙也を知っていた」


「え……？」


まさか、そんな以前から？


一体どこで会ったのだろうか。


私の疑問も含め、ひとしきり話し終えた彼は骨ばった指で私の頬に触れる。


「最初はただ毛色の変わった女がいるな、くらいだったのに。いつからかお前が俺の心に住み着いて離れなくなった。きっとあの頃にはもうお前に恋をしていた」


甘い告白に郁さんへの想いがあふれ、涙がこみ上げてくる。


「プロポーズは唐突だったが、本気だった。俺はお前だけをずっと愛している。沙也以外誰も欲しくない。沙也だから守りたいし、触れたいし、誰よりも甘やかしたい」


頬を伝う私の涙を、彼が唇を寄せて拭う。

触れる優しい感触に、これは現実なんだと思い知る。

高鳴る鼓動が耳に響いてうるさい。

ふいに彼がソファから降りて、私の目の前で膝立ちになる。

大きな両手が私の両手をそっと包み込む。


「郁、さん？」


「――倉戸沙也さん、これからも俺と夫婦でいてくれませんか？」


長い指でそっと私の左手を持ち上げ、結婚指輪にキスを落とす。


「心から愛している。これから先の人生を沙也とともに歩みたい」


思いがけない二度目のプロポーズに胸が詰まる。

愛しすぎて、幸せすぎるとこんなにも胸が痛むなんて知らなかった。

返事をしたいのに、あふれる想いに胸がいっぱいで声が出ない。

彼の深い愛情と思いやりが体中に染み込んで熱い涙がこぼれ落ちる。

こんなにも私を想ってくれる人は、きっと世界中探してもどこにもいない。

これほどまでに愛しく、私の心を震わせる人は郁さんだけ。

どれだけ好きだと、愛していると伝えれば、この想いのすべてが届くだろうか。
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