甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
13.大切な家族
「可愛い!」


リビングに置かれたベビーベッドでぎゅっと指を丸めて眠る息子を、スマートフォンで何枚も飯野さんが撮影する。


「……歩佳、午後から菓子教室の打ち合わせじゃなかったか?」


「まだ大丈夫よ。もう話しかけないでよ。今すごくいい瞬間だったのに」


耀(よう)は俺と沙也の息子だぞ」


「ハイハイ、邪魔しないでってば。もう沙也さん、郁っていつもこんななの?」


最近ではすっかり見慣れた光景に、思わず笑みがこぼれる。

今から四カ月半前に、私は耀を無事に出産した。

すっかりお互いの誤解とわだかまりを解いた私たち夫婦の距離は近づき、今ではどんな些細な出来事もため込まず、話し合って暮らしている。
 
妊娠生活も後半に入り、郁さんの温かなサポートのもと、出産のため休暇に入り日々を過ごしていた。

あの一件以来、私たちはゆっくりと夫婦の絆を深めていった。

彼の新しい姿を知る度に、恋心が今もどんどん募っていく。

迷惑をかけた義兄や風間さん、飯野さんにはきちんと謝罪とお礼を伝えた。

様々な気持ちを抱え込んでこじらせた私が悪いのに、兄として自分にも非があると状況の説明不足を詫びる義兄に申し訳なさがいっぱいになった。

風間さんは、今度なにかあればすぐに店に避難しておいでと優しく言ってくれた。
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