甘やかし婚 ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「――お前を甘やかしたい」
数分前の剣呑な雰囲気を忘れたかのように響谷副社長が柔らかな声で告げる。
「……今日、十分甘やかしていただきました」
ソファの右隣に座る彼に躊躇いながら返答する。
このカフェに通ってしばらく経つが、こんな部屋があるとは知らなかった。
「違う。この先ずっとだ」
広い個室に彼の声が響く。
「ご忠告はしっかり受けとめていますから、大丈夫です」
「元彼にあんなに打ちのめされたのに? プライドはないのか?」
「……恋愛にプライドなんて不要でしょう」
返答し、グッと奥歯を噛みしめる。
冷静に、と店内に足を踏み入れてから何度言い聞かせただろう。
二十八歳になり、感情のコントロールも上手くなったはずなのに、この人の発言に簡単に心が揺さぶられる。
「結婚したいんだろ?」
「ええ、小学校時代の夢は好きな人のお嫁さんとケーキ屋さんだったので」
「ずいぶん堅実な将来設計だな」
「馬鹿にしてます?」
「まさか。ついでにお姫様に憧れていたとか言いそうだな」
なんで、わかるの?
驚きで返答できずにいると、彼がニッと口角を上げる。
「図星か」
堪えきれなくなったのか、ククッと楽し気に声を漏らす。
整いすぎて近づくのを躊躇いそうな面差しが柔らかく崩れていく。
数分前の剣呑な雰囲気を忘れたかのように響谷副社長が柔らかな声で告げる。
「……今日、十分甘やかしていただきました」
ソファの右隣に座る彼に躊躇いながら返答する。
このカフェに通ってしばらく経つが、こんな部屋があるとは知らなかった。
「違う。この先ずっとだ」
広い個室に彼の声が響く。
「ご忠告はしっかり受けとめていますから、大丈夫です」
「元彼にあんなに打ちのめされたのに? プライドはないのか?」
「……恋愛にプライドなんて不要でしょう」
返答し、グッと奥歯を噛みしめる。
冷静に、と店内に足を踏み入れてから何度言い聞かせただろう。
二十八歳になり、感情のコントロールも上手くなったはずなのに、この人の発言に簡単に心が揺さぶられる。
「結婚したいんだろ?」
「ええ、小学校時代の夢は好きな人のお嫁さんとケーキ屋さんだったので」
「ずいぶん堅実な将来設計だな」
「馬鹿にしてます?」
「まさか。ついでにお姫様に憧れていたとか言いそうだな」
なんで、わかるの?
驚きで返答できずにいると、彼がニッと口角を上げる。
「図星か」
堪えきれなくなったのか、ククッと楽し気に声を漏らす。
整いすぎて近づくのを躊躇いそうな面差しが柔らかく崩れていく。