甘やかし婚 ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
――コンコン。
開け放した扉を軽くノックする、風間さんの姿にハッとする。
止まっていた時間がゆっくりと動きだす。
「倉戸さん、具合はいかがですか? 少しは落ち着きましたか?」
タオルと水を手にした風間さんの優しい声に、これは現実なのだと思い知った。
先ほどのキスの件もあり、副社長から距離を取ろうと腰を上げようとした途端、彼が私の肩を掴んで背中にクッションをあてがった。
さらには立ち上がって風間さんから水を受け取り、私に手渡す。
「まだ頬が赤いからちゃんと飲め。つらいなら横になってろ」
私の顔を覗き込む彼に、風間さんが驚きの声をあげた。
「へえ……郁がそんなに甲斐甲斐しく女性の世話をするの、初めて見た」
「……保、無駄口を叩いていないでほかのスタッフを早く帰らせろ」
「ハイハイ。倉戸さん、遠慮せずゆっくり休んでくださいね。扉は半分開けておくから身の危険を感じたら叫んで」
もうすでに感じていますと言えない自分がつらい。
なぜか楽し気な笑みを浮かべて、風間さんは部屋を出て行った。
「……運んでくださりありがとうございます。ご迷惑をおかけしました」
今さらながら、感謝の言葉を告げる。
口づけまでされてこんな他人行儀な会話をするのはおかしいが、お礼は伝えなければ。
「気にしなくていい。元々俺が原因だろ」
相変わらず冷静な口調で響谷副社長が答える。
「ただし、さっきのキスも求婚も本気だからな」
念押しされてカッと頬に熱がこもる。
「返事をくれないか?」
顎に触れる私の毛先を軽く弄ぶ姿にさえ、色香が漂う。
了承しか受け入れないくせに決断を迫る強引さにあきれる。
とりあえずひとりになって状況を整理したいと切実に願った。
開け放した扉を軽くノックする、風間さんの姿にハッとする。
止まっていた時間がゆっくりと動きだす。
「倉戸さん、具合はいかがですか? 少しは落ち着きましたか?」
タオルと水を手にした風間さんの優しい声に、これは現実なのだと思い知った。
先ほどのキスの件もあり、副社長から距離を取ろうと腰を上げようとした途端、彼が私の肩を掴んで背中にクッションをあてがった。
さらには立ち上がって風間さんから水を受け取り、私に手渡す。
「まだ頬が赤いからちゃんと飲め。つらいなら横になってろ」
私の顔を覗き込む彼に、風間さんが驚きの声をあげた。
「へえ……郁がそんなに甲斐甲斐しく女性の世話をするの、初めて見た」
「……保、無駄口を叩いていないでほかのスタッフを早く帰らせろ」
「ハイハイ。倉戸さん、遠慮せずゆっくり休んでくださいね。扉は半分開けておくから身の危険を感じたら叫んで」
もうすでに感じていますと言えない自分がつらい。
なぜか楽し気な笑みを浮かべて、風間さんは部屋を出て行った。
「……運んでくださりありがとうございます。ご迷惑をおかけしました」
今さらながら、感謝の言葉を告げる。
口づけまでされてこんな他人行儀な会話をするのはおかしいが、お礼は伝えなければ。
「気にしなくていい。元々俺が原因だろ」
相変わらず冷静な口調で響谷副社長が答える。
「ただし、さっきのキスも求婚も本気だからな」
念押しされてカッと頬に熱がこもる。
「返事をくれないか?」
顎に触れる私の毛先を軽く弄ぶ姿にさえ、色香が漂う。
了承しか受け入れないくせに決断を迫る強引さにあきれる。
とりあえずひとりになって状況を整理したいと切実に願った。