甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
個人的に引き継いだflowerで俺は名乗るどころか、まず表に出ない。

対外的交渉はもちろん、基本的にすべてを保に任せている。

だからこそ保が俺の行動に目を丸くするのは当然だ。

後先考えずに行動したのなんて何年ぶりだろう。

初めて感じた庇護欲と自分でも戸惑うほどの独占欲……正直彼女のなにが琴線に触れたのか、俺自身理解できずにいた。

それでも真っすぐで嘘のない言葉と、気丈に振る舞おうとする姿からすぐに目が離せなくなった。

彼女が素直に本心を吐き出せる唯一の人間になりたいと願った。

他人の感情を迷惑だとはねつけてきた、自分とは思えない気持ちの変化に俺自身が一番戸惑っている。

それでも彼女の夫になり、家族になりたいと強く願う。

女性関係の悪評を早く払拭し、新事業のイメージのためにも結婚相手を早く見つけろと社長である父に散々催促されてきた。

頭痛の種だったものが、今では沙也を捕まえる最高の口実になる。

きっと両親も兄も俺の豹変ぶりに驚くだろうが構わない。

兄も以前は俺と似たような生活スタイルと考え方だったのに、伴侶に出会ってからはずいぶん変わった。


『お前にもいずれ、わかる』


兄の結婚式当日、なぜか面白がるように言われた台詞を思い出す。

悔しいが兄貴の言う通りだ。

俺自身が戸惑ったくらいだから、沙也がこの突然の求婚を受け入れがたいのは多少理解できる。

言動を疑われるのは堪えるが、彼女をあきらめるつもりも逃がす気もない。

ましてや俺以外の男に渡すつもりもない。

彼女を振った男に心から感謝したい。
 
これからは俺が一生甘やかすと誓う。

だから一日も早く俺のものになってほしい。

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