甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「もう我慢できない……抱くぞ」


ほんの少し唇を離した彼が私をじっと見つめて宣言する。

吐息交じりの掠れた声に胸の奥が震える。

彼の親指が私の濡れた唇に触れ、熱い感触に呼吸が苦しくなる。


それが条件なのに、なんで確認するの? 


望まれて抱かれるのだと勘違いしそうになる。

強引かと思えばひどく優しい、相反するような態度に心が乱される。


「沙也のすべてが欲しい」


情欲の滲む目に魅入られて、喉がカラカラに渇いていく。

この人とひとつになりたい、鈍く痛む心が彼を切望する。


「は、い」


私の微かな返答を彼は聞き逃さなかった。

すぐに噛みつくような口づけが降ってきて、上唇、下唇を順に甘噛みされる。

呼吸さえ奪われそうなキスにゾクリと体が震えてしまう。

長い指が私の衣類をゆっくりと脱がせていく。

その合間にも鎖骨や首筋に小さなキスが落とされていく。

緩急つけて触れられる唇と舌に体が敏感に反応する。


「肌が白いな……痕がすぐつきそうだ」


胸元で嬉しそうに囁かれ体がカッと熱をもつ。

胸をじっと見つめられ、恥ずかしくて仕方ない。

大きな手は私の胸を覆うように敏感な箇所に触れる。


「……そんな、ところで話さないで……っ」


思わず体をよじり、胸元を隠そうとする私の指を自身の指にやんわりと絡める。


「隠すな。綺麗だから全部見せて」


「でも……」


「全部、俺のだろ?」


とろりと滴り落ちそうな甘い、色香のこもった声が私の僅かな抵抗を奪う。

私の弱い部分を探すかのように骨ばった長い指と唇が私の胸元とお腹に再び触れる。
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