甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
ピリと肌に感じた小さな刺激に思わず彼の名を呼ぶ。


「俺のものって印」


形の良い唇を自身の舌で軽く舐める仕草に、体の奥がジンと疼く。

ボトムもいつの間にか脱がされ、太ももに触れた彼がキスを落とす。

私の足の間に体をずらした彼は太ももの付け根に唇を寄せ、赤い花を咲かせる。


「……あっ……」


羞恥と思いがけない刺激に声が漏れる。

フッと彼が息を漏らしたのがわかった。


「可愛い、沙也。もっと感じて乱れて」


体のすべてが熱をもち、敏感に反応してつらい。

じわりと浮かんだ涙を彼が唇で掬う。

さらに私の吐息さえものみ込むように、深く口づけてくる。


「ん……ふっ……」


「……沙也」


低く掠れた声で名前を呼ばれる度に、頭の奥がとろけそうになる。

肌を隠すものすべて取り払われ、郁さんの前にさらされる。

彼も自身の衣類を、普段の落ち着いた所作からは考えられない性急さで脱ぎ捨てる。

引き締まった美しい裸体に目を奪われる。

初めて感じる彼の肌の感触と温もりに心が満たされる。

絡めた指はそのままで、彼の吐息と長い指が私の全身をあますところなく触れていく。

過ぎた快楽に体がぴくんと幾度も跳ね、涙がこぼれる度に可愛い、と郁さんが囁く。

私を惑わす指は手加減が一切ないのに、まるで壊れ物のように大切に扱われている気になる。
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