甘やかし婚   ~失恋当日、極上御曹司に求愛されました~
「……あついな……」


汗ばんだ髪をかき上げる彼の仕草に胸が詰まる。

見惚れるほど綺麗なのに、普段とは違った駄々洩れの色香に酔いしれる。

浅い息を吐くと、快感で潤み始めた場所に長い指で触れられ、彼の腕にぎゅっとしがみつく。


「あ……っ」


私の目尻に浮かぶ涙を舌で軽く舐め、さらに数本の指を体の奥深くに侵入させる。


「沙也……俺だけのものだ…」


私の体を魅了しつくした彼が、色香の滲んだ声でつぶやく。

指を抜き、彼が私の太ももを持ち上げる。

はあ、と熱い息を吐く私に彼が凄艶な眼差しを向ける。


「ずっとこうしたかった」


声に切なさを滲ませて、手の甲で私の頬を撫でる。

ゆっくりと体をひらかれ、押し入ってくる熱に逃げを打ちそうになる。

けれど彼はそれを許さず、絡めた指に力が籠められる。

体内で感じる太く燃えるような熱と甘い刺激に涙がこぼれ落ちる。


「……んっ……郁、さん」


繋がったままの甘い責め苦と、伝わる体温に心が千々に乱れていく。

漏れそうになる声をのみ込むような深いキスに、頭が真っ白になる。

体が揺さぶられる度に、彼がより深い場所に侵入してくる。

こんな風に彼に溺れたくはないのに、甘く激しい行為にどっぷりと心酔した私は考えることを放棄し、滲む視界を閉じる。


「俺の、沙也」


霞む意識の中で、郁さんの優しい声を聞いた気がした。
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