本気の恋を、教えてやるよ。
明るい声がテラスに飛び込んできて、驚いて振り向くと駒澤くん……と、もう一人男の子が立っていた。
キラキラ顔をしているその子とは対照的に、駒澤くんは額に手を当てて大きなため息をついている。
えーっと、たしかこの男の子は……。
「さ、佐川くん?」
恐る恐る呼ぶと、その子はぱあっと破顔した。
「佐川壱人です!稲葉さんに名前を覚えてて貰えてたなんて感激だなあ!」
嬉しいなあ、なんて言いながら私の両手を握り上下にブンブンと振り回す佐川くん。
同じ本社にいる同期だから、名前は知ってた。駒澤くんとお昼を共にするほど仲がいいのは知らなかったけど……でもそういえば、同じ部署だったっけ。
されるがままになりながら、元気な人だなあ、と目を丸くしていると、不機嫌な顔の駒澤くんが私と佐川くんの手をベリっと引き剥がした。
「触んな。稲葉困ってるだろーが。稲葉、こいつのことは無視してくれて構わないから」