本気の恋を、教えてやるよ。
自分で探しに行けばいいのに、と早々にお昼に出てってしまった依頼人の席をちょっと睨みつつ、出そうになったため息を飲み込む。
「大丈夫?手伝おうか」
「ううん!後から追いつくから先に行ってて!」
すぐ終わらせるから!と笑って拳を握れば、梓ちゃんは少し悩んだ後で頷いた。
「ん。じゃあ席取っとくから、ゆっくり来なね」
「うん、ごめんね」
また後で、と梓ちゃんに手を振って、ついでにと片付けを頼まれたいくつかの資料を抱える。
それがまた一つ一つ分厚くて、ちょっと重い。
よいしょ、と小さく声を出しながら持ち上げて、廊下に出たところで「稲葉」と横から声をかけられ、私は危うく床に資料をぶちまけてしまう程驚いた。寸での所でどうにか耐えたけど。
「び、びっくりした……」
「悪い……」
バクバクと鳴る心臓を必死になだめながら見上げると、駒澤くんが申し訳なさそうな顔で立っていた。