本気の恋を、教えてやるよ。
完全に駒澤くんのペースだ……と頭を抱えながら、どこまでも優しい彼の背中に感謝し、私は資料を抱え直して残りの道を歩き始めた。
資料室の前までたどり着き、荷物を一旦下ろす。
磨りガラスから窺える室内は暗く、誰もいないな、と思って、躊躇うことなく扉を開いた瞬間。
視界に飛び込んできた光景に、頭が真っ白になった。
棚にしなだれ掛かるようにして、貪るように口付けあう二人の男女。
それは……。
「ぁ…ん……慶太……」
甘ったるい声で呼ばれた、その名前。
骨ばった手が、乱れたスカートの裾の中を潜るのを、私は凍りついたように見つめることしか出来なかった。
──どうしよう、動けない。
やがて、慶太の冷めきった視線がゆっくりと私を捉えようとして──、
「イチャつくなら帰ってやれよ」
その時、急に何かに覆われたみたいに目の前が真っ暗になり、頭上から怒りを凝縮させたような声が降る。