本気の恋を、教えてやるよ。
無意識のうちにその声にホッとしてしまい、力が抜けて崩れ落ちそうになったところを、腕を引かれてその場から連れ出される。
何が何だか分からないまま私は、遠くの誰も使ってない会議室まで連れていかれた。
「っはぁ……はぁ……」
走ってきたからか、呼吸が苦しい。
自分でもびっくりするくらい混乱してて、頭の中がぐちゃぐちゃだった。
さっきの生々しい光景が、目に焼き付いて離れてくれない。
何度もフラッシュバックするそれをどうすればいいのか分からず、その場にへたり混みながら息を吸うのに精一杯になってると、傍に駒澤くんが座った。
「……稲葉」
苦しそうな、声。
そんな彼を見あげようとしたところで、彼の腕が伸びてきて──そのまま、すっぽりと包み込むように抱きしめられた。
「駒澤く、」
「泣くな。アンタに泣かれると、どうすればいいのか分からなくなる」
そう言われて初めて、自分の頬を濡らす存在に気がついた。