本気の恋を、教えてやるよ。



私、泣いてるの?


「お、かしいよね……っ…あ、あんなの、見慣れてるはず……っ…な、のに……」


笑い飛ばそうとして、出てきたのは震えた泣き声だった。


駒澤くんの腕の力が、ぎゅう、と強まる。


……違う。

私が今まで見てきたのは全て事後だったり、ただ腕を組んでただけだったりで、実際にキスをしたり、触れたりしてる所は見たことがなかった。


だから、いくら知らない人が隣で裸でいても、全然実感なんて湧いてなくて、でも。


「あんなキス……っ」


あんなキスを目の当たりにしたら、もう目を逸らすことなんて出来ないじゃないか。


まだ心のどこかで、激しくて情熱的なキスは、きっと私だけにしかしていないだなんて、そんな馬鹿みたいなことを願って、信じてた。


苦しい。胸が抉られたみたいだ。


ずっと、傷ついてないふりをしてた。──本当はこんなに痛くて、辛いのに。


あそこで駒澤くんが来てくれなかったら私、どうなってたんだろう。




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