本気の恋を、教えてやるよ。



「駒澤く……っ、あ、ありがと……」

「……もう、あんな男とは別れろよ」

「っ、でも……」


しゃくりあげながら、思い出すのは慶太の苦しげな顔だった。


「私は、慶太を、守らなきゃ……」

「そんなの、恋じゃねえよ。アンタはただ、アイツに依存してるだけだ」


私の主張は、苛立ったような声に一蹴されてしまった。


依存……。


呆然とする私を、駒澤くんが少し力を緩めて、真剣な眼差しで私を覗き込む。


淀まず、揺らがず。

昼光色に凛と照らされるその表情に、思わず小さく胸が高鳴った。


「……稲葉も、筒井と同じことしてみればいい」


突然、そんなことを言い出した駒澤くん。


「筒井のこと、見返してやれよ。アンタも浮気して、アンタの気持ちを筒井にも知らしめてやればいい」

「う、浮気なんて……!」

「ただし、浮気相手は……俺とだけ」


そう、艶っぽく細められた瞳の中に、どこか悪戯っぽさを滲ませる駒澤くん。




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