本気の恋を、教えてやるよ。




だから咄嗟にあんな話を持ちかけた。

浮気されてるなら浮気し返してやろうなんて、ふざけた考えだと自分でも思う。思う、けど。


他になんて言ったらいいのか分からなくて。

素直に好きだとは、言えなくて。


「こんなんじゃダメだよな……」


こんな中途半端じゃ。


伝えよう。

真っ直ぐ、ありのままを。


ずっとアンタが好きだったんだってことを。






「こ、駒澤くん……」


練習が終わった後、稲葉にメッセージを送った俺が稲葉を待っていると、戸惑いがちに稲葉がやって来た。


「ん」


片手を挙げて応えれば、稲葉がやけに真剣な顔で近付いてくる。


そして──突然、思い切り頭を下げたのだった。


「ご、ごめんなさい!」

「……は?」


いやいやいや。


いきなりごめんなさいとか言われても。

……え?なにこれ。え?


訳が分からずキョトンとしていると、困り眉の稲葉が顔を上げた。




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