本気の恋を、教えてやるよ。



まだ混乱して何も言えずにいる私に、駒澤くんは小さく微笑むと、私の頭をぽん、と叩くように撫でた。


「じゃあ、また明日もよろしく。……おやすみ、茉莉」


そう、蕩けるような瞳で私を見つめてから、ひらひらと手を振って部屋の中に入っていってしまう駒澤くんを、私はただぼうっと見つめていた。


触れられたおでこが熱い。

心臓が、これでもかというほど早鐘を打っている。


「……茉莉って……呼ばれた……」


駒澤くんが突然、“男の子”になってしまった気がした。


──その日の夜。


駒澤くんとのやり取りを思い出してしまい、なかなか眠れなかった私は、冴えた瞳で意味もなく天井を見つめていた。


「ねえ梓ちゃん……」

「なに?」


どうやら同室の梓ちゃんもまだ寝ていなかったらしく、声をかければはっきりとした返事が返ってきた。


「慶太のこと、どう思う?」

「人間のクズ」



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