本気の恋を、教えてやるよ。



ついその光景を想像してしまい、顔が熱くなる。


「むっ、無理だよ!」

「なんで」

「恥ずかしいよ!」


そんな、恋人同士みたいな……ハードルが高すぎる。


「……なあ、腹減った」


だけど、ちょっとムスッとしながら私を見つめる駒澤くん。


……意地でも食べさせてもらうつもりなんですね。


「お、お箸あるよ?」

「……」


駒澤くんは何も言わずに、私を見つめる。


うう……。

このままじゃ、埒があかないよ……。


私は意を決して箸を持つと、卵焼きを一切れつかみ、駒澤くんの口元へと運んだ。


箸を持つ手が震える。


無意識のうちに視線を駒澤くんの唇へと送ってしまい、綺麗な唇だなあなんて考えていると、パクリと卵焼きが吸い込まれた。


「……ん、旨い」


ペロリ。口の端についた卵の欠片を舌で舐めとる仕草がやけに艶めかしくて、直視出来ずにパッと顔ごと目を逸らす。



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