本気の恋を、教えてやるよ。
*º駒澤side.
あぶねー……理性、飛びそうだった。
稲葉に卵焼きを貰ってから部屋に戻った俺は、はあ、と息をつきながらその場にしゃがみ込んだ。
さっきの光景がフラッシュバックする。
震える小さな手。
潤んだ瞳。
きゅ、と固く引き結ばれた小さな桃色の唇。
紅く染まる頬。
──極めつけは、上目遣い。
そんなことを好きな女にされたら、どんなに強固な理性の持ち主でも耐え難いだろう。
むしろ、外に二人きり、他には誰もいないなんて絶好のあの空間で、何もせずに耐えた俺のことを褒めて欲しいくらいだ。
マジで、稲葉の行動の一つ一つがツボすぎるんだよな……。
「さて、どーすっかな……」
もう後には引けねーし。
諦めるつもりもないし。
それになにより、早く稲葉を筒井から解放してやりたい。
あの歪な関係から、盲目な恋から稲葉が醒めるなら、俺のことを好きになってくれなくてもいい。