本気の恋を、教えてやるよ。
今更、何もかも遅いんだよ。
「なんでだよ……お前ほどの奴なら、女の子なんて他にもいっぱい居るだろ……?」
「それを言うならお前だってそうだろ」
「違う。俺には茉莉だけだ。茉莉だけなんだよ」
──何だ、それ。
だから手を引けって?ふざけんな。
「今まで自分がどれだけ稲葉のこと傷付けたのか、分かってて言ってんの?」
「それ、は」
「都合いいことばっか言ってんじゃねえよ。……話にもならねえ」
俺はそう吐き捨てると、途方に暮れたような顔の筒井を無視し、壱人の腕を引いてその場から去った。
本当に都合のいいことばっかりで、ムカつく。
……俺だって稲葉以外、要らないんだよ。
好きだと思うのも、愛してると思うのも、どうしようもなく焦がれるのも、相手が稲葉だから。
稲葉じゃなきゃ、意味が無い。
「……なんか、怖かったな。あいつ」
戸惑う壱人を引き連れたまま飲み屋に入ると、小声で壱人がそう言った。