本気の恋を、教えてやるよ。
どこか落ち着かなさそうに、ビール片手にキョロキョロと辺りを見回している。
「心配しなくてもこんな所まで追いかけては来ねーよ」
「そ、そうだよな……」
はは、と若干引き攣ったように笑うと、壱人は気まずさごと押し流すようにビールを流し込んだ。
それにしても、壱人の言うようにさっきの筒井はどこか様子がおかしかった。いつものような余裕さが、どこにも無くて。
「……何なんだよ、マジで」
あんな状態の筒井を見たら、稲葉は優しいから、きっと筒井の傍に居ようとする。
やっと、稲葉の気持ちがこっちに向きかけてるかもしれないってのに。
頼むから消えろ、なんて、本当にこっちの台詞だ。
頼むから──。
もうこれ以上、稲葉のことを振り回さないでくれ。