本気の恋を、教えてやるよ。
「……あんま見ないで」
「あっ、ご、ごめんね」
ぶっきらぼうに言われ、さすがに失礼だったかなと反省する。
駒澤くんは暫くむっつりと視線を逸らしていたけど、やがてちらりと私を見下ろして、薄い唇を開く。
「……稲葉も──」
「おーい、駒澤!」
駒澤くんが何かを言おうとした時、後ろの方から彼を呼ぶ声が聞こえてきて、駒澤くんはピクリと眉を動かした。
「……悪い。また」
それだけ言うと、彼は声の方へと歩いていってしまい、後には私たち三人が残された。
「あー、部長に呼ばれたのか。なんだろ、他の支店に挨拶とかかな」
「挨拶回りとかあるの?」
「ん、支店から依頼を受けての仕事とかも結構あるからねー。楽斗は仕事が早いから部長のお気に入りなのよ」
そう肩を竦めた佐川くんに、仕事もできるなんてすごいなあ、と感心する。
なんとなく駒澤くんが去っていった方を眺めていると、佐川くんがどこか愉しげに話しかけてきた。