本気の恋を、教えてやるよ。
「梓ちゃん……」
そういう言い方は、狡い。
そう思って抗議するような視線を送れば、梓ちゃんはにっこりと微笑んだ。
「ラブラブしてこいバカップル!」
だからカップルじゃないってば!
それから暫く、私は梓ちゃんとの歓談を楽しんでいたけど、梓ちゃんが途中で上司の人に呼ばれてしまい、ついに一人ぼっちとなってしまった。
一人だと尚のこと居心地が悪く、飲む気も食べる気もしない。
こんな時、自分にも他のテーブルに挨拶に行くようなコミュ力があればなあ……と憂鬱な溜息をつきながら床に視線を落としていると、ふ、と足元が暗くなった。
「お嬢さん、一人ですか?」
そのセリフにドキッとする。
梓ちゃんから、もし誰かに話しかけられた時は、人を待ってるから一人じゃないと言い切るように、と強く言い含められていたのだ。
それが何故かは分からないけど、私は意を決して顔を上げて、そのまま言葉を失った。