本気の恋を、教えてやるよ。



何故ならそこに立っていたのは、揶揄う様な眼差しで微笑む、駒澤くんだったから。


「駒澤くん!」

「今、俺だって気付いてなかったでしょ」

「う……だ、だっていつもと喋り方が違かったから……」


それに、声も少し作ってたみたいだったし……。


駒澤くんはそれ以上突っ込まず、側を通りかかったウエイターさんからワイングラスを受け取ると、少しだけ私の方に傾けた。


思わずきょとりと見上げると、優しい眼差しが降ってくる。


「さっきバタバタして、全然話せなかったから。改めて」

「あ、うん!」


乾杯、とお互いのグラスを重ねる。


えへへ、となんとなくお互い微笑みあった時──不意に視線を感じ、ぞくりと背筋が強ばった。


恐る恐る視線の方を向けば、離れたテーブルから、慶太がじっとこちらを見てるのがわかった。


「っ、」


やっぱり、慶太を見ると更に体が強ばってしまう。あのキスシーンを、思い出して。



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