本気の恋を、教えてやるよ。
私と梓ちゃんはいつも早々に帰宅する組で、明日も仕事だし今日もそうだろうなあ、なんて梓ちゃんの姿を探してキョロキョロと辺りを見回していた時。
「稲葉」
声を掛けられて振り向くと、グラスを二つ持った駒澤くんがこちらに微笑んでいた。
「少し二人で飲み直さない?」
桃色のカクテルが注がれたグラスをそう持たされてしまうと、もう断る術がなく。
戸惑う私にくすりと笑い、駒澤くんが空いた手で私の手を握った。
そのまま、まるで恋人がするように指を絡められて心臓が激しく鳴り始める。
「駒澤くん……!」
「妻夫木には言ってあるし、壱人が責任持って駅まで送り届けるからさ。少しだけ、お願い」
甘えを含んだ声で言われてしまうともうどうにもならない。
なんておねだり上手なんだ……と呆然としながら、繋がれた手だけは恥ずかしくて、ちょっと苦言を呈してみる。
「手、は……」