本気の恋を、教えてやるよ。
「あのさ」
うん?と首を傾げると、僅かな切なさを滲ませたような顔で駒澤くんが微笑んだ。
「ありがとな。俺に付き合ってくれて。ちょっと強引に連れ出したけど」
「え?ううん、いいよ!別に誰かと約束してた訳でもないから……」
「筒井は?」
ふと、突然出てきたその名前に表情が凍る。
駒澤くんの双眸は、痛いほど真っ直ぐに私を見つめていた。
「筒井と抜け出す予定とか……なかったんだ?」
「な、いよ……。誘われてすら……」
──馬鹿だ、私。
自分で言って、自分で傷付いた。
いつもの慶太なら、こういうイベント事の時は少しくらいは誘ってくれてた。
それこそ、私の居るテーブルまで来てくれたり、帰りに駅で待ち合わせたり。
そんな日だけは浮気なんかしないで、私と居てくれたのに。それが今回に至っては、声も掛けられてないなんて。
もう慶太は私のこと、嫌いになっちゃったのかな。