本気の恋を、教えてやるよ。
慶太に捨てられたのかな、私……。
思わず目を伏せた私に、駒澤くんも視線を逸らす。
「……ごめんな。俺、どうしてもアイツと二人きりにさせたくなくて。アイツが稲葉に話しかける隙も出来ないように、ずっとくっ付いてた」
「そんな……」
「稲葉と二人きりになりたい、って、はっきり言えなくて。……女々しいよな、俺も」
そう、どこか自嘲するように笑った駒澤くん。
「……稲葉の前だと、上手くいかない」
ポツリと呟くと、駒澤くんは私の手からグラスを抜き取り、自分のものと併せて側のテーブルに置くと、そのまま私を抱き寄せた。
一瞬の出来事で固まった思考を、爽やかな香水の匂いがじわりと溶かす。
「っ、駒澤くん……!」
「お願い、少しだけこうさせて」
どうしよう、熱い。
駒澤くんと触れ合う部分から、溶けてしまいそうなほど。
ドクドクと心臓の音が煩くて。
駒澤くんに聞こえてしまいそうで恥ずかしくて。