本気の恋を、教えてやるよ。
でも。
「あー……ヤバい」
「え?」
「俺、今めちゃくちゃドキドキしてるから。……稲葉にも聞こえちゃってるよな、これ」
ちょっと恥ずかしい。なんて照れたようにはにかむから。
……この心臓の鼓動が、途端に居心地のいいものに変わってしまった。
「……稲葉、早く俺のこと好きになって」
「駒澤くん……」
掠れて、熱っぽい声が耳を撫でる。
私が今までしてた恋は、苦しくて、辛いのを我慢するばかりの恋だった。
じゃあ、駒澤くんに感じてる、この感情は?
ドキドキして、違う意味で、苦しくて。
その温かさに、甘さに、どうしようもなく縋りたくなるこの気持ちは、なんだろう。
「稲葉、嫌だったら突き飛ばして」
ぴったりくっ付いていた彼との間に、少し距離が開く。
そして駒澤くんは、真剣な眼差しでそう言うと、そっと睫毛を伏せて。
段々と近付いてくる彼の整った顔に、私もそっと目を閉じた。