本気の恋を、教えてやるよ。




*º楽斗side.



あー、ヤバい。これはヤバい。


衝動的に稲葉のことを抱き寄せたはいいものの、そんなことしなければ良かった、と後悔した。


だって、あまりにも柔らかくて。


女の子らしい、ふわりと夜の空気を含んだ細い髪が俺の頬や腕を撫でる度、そこからカッと熱が広がるみたいに身体中が熱くなった。


……ここが外じゃなかったら、襲ってるかも。


そんな節操もないことを考えながら、折角の機会だからと抱きしめる力を強めて、肩口に鼻先を埋める。


稲葉。

稲葉、好きだ。


だから──。


「……稲葉、早く俺のこと好きになって」


ぽつりと無意識に零した言葉はどうしようもない本心で。


……やっぱり駄目だ。我慢なんか出来るか。


こんなに近くにいて、彼女は俺に大人しく抱き締められてて。


簡単に、稲葉の全てに触れてしまえる距離で──。


「稲葉、嫌だったら突き飛ばして」



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