本気の恋を、教えてやるよ。



帰りはたまに、手を繋いで帰る。

──まるで、仲が良かったあの頃のように。


「今の慶太なら大丈夫」


確証なんてない。

だけど、そう思うの。


梓ちゃんは暫く私の話を聞いてくれていたけど、やがて、深いため息をついた。


「……茉莉、ほんと筒井に振り回されてばっかり」

「あはは、そうかも」


慶太の言動に一喜一憂して。

彼の機嫌を窺う癖は、今でも抜けない。


「茉莉、まだ筒井のこと好きなの?」

「好き、だよ。……多分」

「多分って、何それ」

「いや。あはは……」


──言えない。


前までは、躊躇いもなく答えられたのに。


今はどうしても、脳裏に駒澤くんの姿がチラついてしまうなんて。


慶太と二人でいても、ふとした時に駒澤くんのことを考えてしまう時があるなんて。


……こんな曖昧な気持ち、誰にも言えない。




「……じゃあね、茉莉」

「うん、お疲れ様」



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