本気の恋を、教えてやるよ。
こんな、弱ってるところにつけ込むような真似、卑怯だって分かってるけど。
──やっぱり俺は、どんなことをしてでもアンタを振り向かせたい。
俺、こいつの弱ってるところ狙ってばかりだな、なんて心の中で苦笑しながら、そっと稲葉の耳元で囁く。
「……俺のこと、好きになって。今すぐじゃなくていいから」
辛いなら、俺のこと代わりにしたっていいから。
だから。
「俺と付き合って──」
しんしんと降り積もる雪の中、ただ彼女が冷たくなってしまわぬように、きつく、きつく、抱きしめた。