本気の恋を、教えてやるよ。



私を抱きしめる体温は暖かくて、心地よくて、縋りたくなった。──なった、けど。


痛いほど真っ直ぐに想ってくれてるのに、軽い気持ちで答えるのは残酷だって、わかってたから。


「……友達から、じゃ、ダメかな…」


そう言った。

そしたら、わかった、と駒澤くんは頷いてくれたのだけど。


付き合えないよ、とはっきり断れなかった辺り、もう、少し駒澤くんに絆されているのかもしれない。


『えー、もうさっさと付き合えばいいのに』

「さっさととか、そんな……駄目だよ」

『駒澤ほどの優良物件、そうそう無いんだからね!』


優良物件って、と苦笑いすると、ほんとだよ!と念を押された。


わかってる。

わかってるよ。駒澤くんがどれだけいい人なのかってことくらい。


いつも優しくて、頼り甲斐があって。


駒澤くんからの好意に触れる度、自分の狡さに嫌気が差す。



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