本気の恋を、教えてやるよ。
「……あ。稲葉、ちょっと止まって。ごみ、ついてる」
ふと駒澤くんはそう言うと、私の前髪へと手を伸ばしてきて。
取れたよ、と笑う彼の手には埃がついていた。
「ありがとう」
優しい、なあ。
こういうふとした時の駒澤くんの優しさに、泣きたくなるほどの愛しさを覚える。
「……どうしてそんなに優しいの?」
優しくしてもらえるほど、立派な人間でもないのに。
「え?」
零した言葉は、駒澤くんに届けるつもりは無かったものだった。
だけどどうやら聞こえてしまったらしく、駒澤くんはキョトンと首を傾げ。
「好きだからに決まってんだろ」
それ以外に何があるんだよ、とでも言うように、真っ直ぐにそう言い切ってくれた。
……駒澤くん。
そんな風に言ってくれてありがとう。
好きになってくれて、ありがとう。
まだ、言うことは出来ないけど。
私もすぐに伝えるね。
──あなたのことが、好きです。