本気の恋を、教えてやるよ。
聞き慣れた、でもいつもよりワントーン低い声がしたかと思ったら、私と二人組の間に広い背中が立ちはだかって。
……今度こそ、駒澤くんだ。
「……待ち合わせしてんの、俺。なに、カラオケ行く?」
ふ、と笑いを含んだ声。だけど肩越しに見える二つの顔がさあっと青ざめたところを見る限り、あんまりいい笑顔はしてないんだと思う。
「か、彼氏いたのか〜!」
「いやー、邪魔してごめんネッ!じゃ!」
さらば!と言わんばかりに潔く去っていった二人。
ぴゅーっと逃げ帰っていく二人を眺めながら、一撃だったなあ、なんて思いつつ顔を上げると、くるりと駒澤くんがこちらを振り向いて。
その顔は物凄く不機嫌そうだった。
「……稲葉」
「は、はい」
「何ナンパなんかされてんの」
えっ。
されたくてされたわけじゃないので、何で、と聞かれても困る。
「な、何でだろうね……?」