本気の恋を、教えてやるよ。
一気に緊張が押し寄せてきて、喉がカラカラに渇く。
私はゴクリと生唾を飲み込んでから、鞄に入れておいたチョコレートをそっと差し出した。
「バレンタインの、チョコです……」
味はあんまり期待しないでね、と付け足した私に、駒澤くんは目の前のチョコレートをじっと見つめていたけど。
不意に、その顔を上げて。
「……これ、そういう意味だと思っていい?」
「え?」
「俺にチョコレートくれたってことは……そういう事、だよな?」
真面目な顔で、少し小首を傾げるようにして尋ねてきた駒澤くんに、私は目線を上げられないままこくりと頷いた。
「そ、そういう事、です」
「……稲葉」
「……はい」
「なんかもう今、稲葉にキスして抱きしめたい」
「!?」
明け透けな言葉に驚いて顔を上げると、もう目の前に長い睫毛に縁取られた綺麗な瞳があって。
──瞬く間もなく、柔らかい唇が触れた。