本気の恋を、教えてやるよ。



唇を尖らせる駒澤くんに眉を下げて笑う。


そう、駒澤くんはなんとこの後休日出勤なのだ。なんでも他案件のトラブル対応に駆り出されてしまったらしい。大変だ……。


やがてあっという間に家の近くまで着いてしまう。


「ここまでで大丈夫だよ!送ってくれてありがとう。お仕事、頑張って」

「ん」


なんだか名残惜しいなあ……。なんて思いながら、じゃあ、と手を離そうとした時。


──突然、そのまま腕を引かれ、もう片方の手で腰を抱き寄せられる。


「ん……っ」


さっきよりも長くて深い、キス。


離れる時に唇をぺろりと舐められた時には、このまま心臓が宇宙まで飛び出すんじゃないかと思った。


「……じゃあな。チョコ、ありがと」


ゆでダコのような顔で放心状態の私に、駒澤くんはちょっと照れたように囁くように言うと、そのまま来た道を戻っていって。


私は、暫くそこに立ち尽くしていたのだった。




< 254 / 392 >

この作品をシェア

pagetop