本気の恋を、教えてやるよ。
*º楽斗side.
「……来期、異動とかあったらどうしよ」
「楽斗それもう十回くらい聞いた」
仕事終わり、廊下を歩きながらポツリと零すと、壱人か呆れた表情を向けてきた。
「楽斗さあ……予想外すぎ」
「何が?」
「なんかお前ってもっとクールな奴かと思ってた」
と笑う壱人。
「でも、稲葉さんのことになると、なんかもうデレデレだし、余裕は無いし」
「デレデレって……」
そんなふうに揶揄されるほど、鼻の下を伸ばしたつもりは無い。
だけど確かに、余裕は無い。……あるわけが無い。
やっと手に入れたんだ。
ずっとずっと好きでたまらなかった女の子を、やっと。
もう手放したくないし、離れたくないし、不安にもなる。
「まあ、そんな楽斗も可愛いぞッ」
「いや可愛いってなに」
キモイわ、と肩を組んできた壱人を睨んだ。