本気の恋を、教えてやるよ。
「……あのさ」
「うん?」
「明後日、仕事が終わったら連絡するから、夜は開けといて欲しいんだけど……なんか用事ある?」
「明後日?……あ、ホワイトデー?」
「そう」
定時には上がれるから、と言えば、待ってるね、と嬉しそうに笑う稲葉。
本当はデートとか出来たら良かったんだけど、年度末に向けて仕事が大詰めで、休日にも容赦なく降り掛かってくる。
付き合ってそろそろひと月が経つとはいえ、していることは二人で帰ったりご飯を食べたり。
……付き合う前と変わらないよな、これ。
「次、休みの日はどっか行こうな」
そう言うと、幸せそうに笑ってくれたから。
きっとこの関係は壊れやしないだなんて、安易に信じきっていた。
ホワイトデー当日。
定時間際に仕事を捩じ込まれ、予定より一時間押して漸く終わった。
予定外の仕事が舞い込んで残業になるのは日常茶飯事で、いつもなら何も思わないが今日は訳が違う。