本気の恋を、教えてやるよ。
はい、と差し出してきたのは小さな袋。
首を傾げると、悪戯っ子のような笑みで新田さんが囁いた。
「これは稲葉にだけ。前に欲しがってたキーホルダー」
「ご当地の……!?」
「それそれ。集めてるんでしょ?」
確かに、各地のパーキングで売ってるご当地キーホルダーを集めるのが密やかな趣味だったりする。
でも、きっと何気ない会話の中でポロッと零しただけであろう内容を覚えててくれたのが嬉しくて、思わず破顔した。
「ありがとうございます!」
そんな私に、ニコニコと新田さんも微笑む。
「いいねいいね、この癒される感じ懐かしいわ〜」
新田さんがそう言って、私の頭をよしよしと撫でたその時。
「稲葉さん」
──全てを凍らすような冷たい声が聞こえて、私はヒュっと息を呑む。
突然気道が狭くなって、息が出来なくなったみたいだった。
そんな私の様子に気がついたのか、それとも凍てつくような声に違和感を感じたのか。