本気の恋を、教えてやるよ。
本当はこんな気持ち、持ちたくなかった。知りたくなかった。こんな、醜い、嫉妬なんて。
あの二人が言葉を交わす事さえも嫌だ、なんて行き過ぎた独占欲だ。わかってる。わかってんだけど。
自分で自分が抑えられない。
恋は時々苦しくて面倒で、逃げ出したくなる。
好きな女と付き合えて、それだけでもう十分だと思ってたはずなのに、いつの間にかその先を望んでしまうようになった。
なんの不安も障害もない、幸せな恋に焦がれてしまう。
気持ちなんてものは影も形もなくて、目視できなくてあやふやで──だから、怖い。
知らない内に。見えないうちに。
どこかに消えてしまったらどうしよう、なんて。
「……教えてくれてありがとな、妻夫木。俺、稲葉のこと待ってるから、二人で飯食ってて」
「……仕方ないわね。ほら行くよ佐川」
妻夫木が、壱人の背中をバシッと叩きそのまま引き連れていく。