本気の恋を、教えてやるよ。



その背中を小さく苦笑して見送ったあとで、踵を返す。


──会いたい。


アンタに会いたいよ、稲葉。






「あれっ!駒澤くん!?」


それから、俺は何をして時間を潰していたのか。


気付くと目の前に驚いた顔の稲葉が立っていた。


「もしかして、待っててくれたの?」

「あ、ああ……」


そう。確かに待ってた。コンビニで二人分の昼食を適当に買って……でも、その後の記憶が無い。


大分ぼーっとしてたんだな、と自分自身に苦笑いしながら、稲葉へと手を差し伸べる。


「昼、適当に買ってきたからその辺の部屋使って食べよ」

「……うん!」


そして、躊躇いもなく乗せられた温もりに、俺はまたどうしようもなく安堵した。


「──なあ、俺に隠してる事ない?」


近くの会議室に入り、ペットボトルのお茶やおにぎりを稲葉に手渡した後で、俺はそう切り出した。


俺の言葉に、稲葉が不思議そうな顔をする。



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