本気の恋を、教えてやるよ。



「……今日委員会だったんだろ?その後、誰と居残りしてたの」


敢えて稲葉の目は見ないようにしながら核心に触れれば、視界に映る稲葉の指先がビクッと震えて。


「あの……実は、慶太と同じ係に……あ、あのね、係って言うのは、」

「その辺は妻夫木に聞いた」


遮ると、しん、と沈黙が落ちる。


稲葉を見ると、稲葉は眉を八の字にしながらこちらを見上げていて、その潤んだ瞳はぐっ、と胸にクるものがある。


その上目遣いは計算なのか無自覚なのか。……まあ、十中八九、後者だろうけど。


「何で言わなかったの」

「ごめんね、なんか気まずくて……」

「隠される方が不安になる」


少しだけ責めるような口調になってしまったのは見逃して欲しい。


稲葉はしょんぼりと俯きながら「……ごめんなさい」と謝った。


「いや、怒ってるわけじゃねーけど……。ごめん、キツく言いすぎた」



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