本気の恋を、教えてやるよ。



「お疲れ」

「お疲れ様!ごめんね、遅くなって」

「全然。思ってたより早かったくらい」


他愛ない会話をする横で、意識は稲葉の後ろや、階段へと向かい、別の人影を探してしまう。


もしかしたら筒井が来るんじゃないか、なんて。


来たところで何が起きるわけでもないのに。


「……今日、どうだった?」

「どうって?」

「だから、さ……」


あーもう、うじうじ女々しいな、俺。


気になるならすっぱり訊いてしまえばいいと分かってるのに。


「……何か、筒井と話したりとかした?」


俺の言葉に、うーん、と考える稲葉。


「係に関すること以外には何も……。あ、でも、前に駒澤くんと付き合ってるの?とは訊かれたかな……」

「なんて答えたの?」

「そりゃ勿論、うん、って」


そりゃそうだろ。当たり前だ。馬鹿じゃないのか俺。


誤魔化したりなんかするわけ無いに決まってるのに、何を確認してるんだよ俺は。



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