本気の恋を、教えてやるよ。
新田さんも怪訝そうな顔で私の頭を撫でるのをやめ、声のする方を見た。
私も振り返らないわけには行かずそちらを見れば、そこに立っていたのは綺麗に笑う慶太。
だけど、その目は笑っておらず、酷くにごっている。
「お話中すみません。入金のことで、急ぎ確認したい件があって」
「あっ、は、はい」
慌てて座り、スリープモードになっていたパソコンを立ち上げようとしたが、制するように腕を掴まれる。
「会議室取ってあるんで、来てくれます?」
パソコンも要らないんで。そう言われ腕を軽く引っ張られると、誘導されるように立ち上がってしまう。
そこで腕は放されたが、もう彼について行くという選択以外、無かった。
「稲葉」
そのまま背を向け歩き出した慶太に続こうとすると、新田さんに呼び止められる。
振り向くと、「大丈夫?」と問うように心配げな顔でこちらを見ていた。