本気の恋を、教えてやるよ。
……ううん、どれも違う。
ここは──笑うべき。
私は、一瞬フリーズしてしまった表情筋をどうにか緩ませ、へらりと笑って見せた。力のない、情けない笑みだろう。
こんなふうに笑ってみせるのも、もう、何回目かな。
「あー……、邪魔しちゃった?ごめんね。私、帰るね」
努めて明るく、そう言って部屋から出ていこうとすれば、「茉莉(まり)」と彼に呼び止められる。
反射的に足を止め、ちらりと彼を見ると、彼はベッド脇のサイドテーブルからスマホを取り、ひらひらと左右に振った。
「これ、取りに来たんじゃねーの」
そう。彼が持っている、彼とお揃いのカバーをつけたスマホは私のもの。
昨日ここに忘れてしまったのを、仕事帰りに慌てて取りに来たら、こんな状況だった。
扉へと向きかけていたつま先をもどし、僅かに目を伏せる。
「うん……ありがとう」
「後で連絡する」
「わかった」