本気の恋を、教えてやるよ。
稲葉茉莉との出会いは入社式。
広いホールに、ずらりと並んだパイプ椅子。早めに席に着いていた俺の前を、軽く会釈して通り、隣に座った女の子。それが、茉莉だった。
入社後の合同研修でも茉莉とは隣で、俺の隣に座る茉莉は大人しく、自分から誰かに話しかけることも無く、かといって孤立しているわけでもなく。
不思議な女の子だな、というのが第一印象だった。
華奢で小さくて、目がくりくりとした守ってあげたくなるような女の子。そんな茉莉は入社して直ぐに男共の間で話題になるほど人気があり、俺も可愛い子だな、と思っていた。
そんな子と入社早々接点ができるなんて、ラッキーかも、なんて安易に喜びながら、
「俺、筒井慶太。よろしくね、稲葉さん」
「あ、稲葉茉莉です……よろしくね」
そして俺たちの物語は、動き出した。
──いざ話してみれば、見た目が可愛いだけじゃなく、中身もいい子だってすぐに分かった。