本気の恋を、教えてやるよ。



……こんな筈じゃ無かったのにな、なんて零した言葉は虚しく霧散して。


そして俺は、君との歪な関係をこの手で終わらせることを決めた。



──最後はせめて正しい恋人であろうと、茉莉を昼や出勤、退勤時に誘った。


二人きりの時間で、他愛ない話を振れば初めは驚いていた茉莉も、その瞳に光をもどし、やがて嬉しそうに微笑んだ。


最後の一週間は、まるで夢のような時間だった。


昔の俺たちに時が戻ったような。


──変わってしまったのは、何だったのか。


そしてクリスマス。


別れを告げた後、俺は振り返らずに早足でその場から去った。


振り向いたら、「さっきのは嘘だよ」なんて言って、抱きしめてしまいそうで。


別れたくないなんていえば、きっと茉莉は頷くから。


後ろから、啜り泣く声が聞こえて拳を握る。


……泣くなよ。

大丈夫、お前のヒーローが、ヒーローらしく登場してくれるから。



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