本気の恋を、教えてやるよ。
「けほっ……!」
その内ほんとうに呼吸が限界になって、咳き込みながら慶太の胸を押し返す。
浅く肩で息をしながら整えていると、その肩を指が食い込むほどの力で掴まれた。
「痛っ……」
「あの男、誰」
痛みに呻く私なんて気にもせず、低い声で問いかけてくる慶太。
質問の意味が分からなくて、生理的に浮かんだ涙をそのままに慶太を見上げた。
「あ、あの男って……?」
「さっき、お前が楽しそうに話してた男だよ」
「新田さんのこと……?」
すると、慶太が嘲笑うように口元を歪め、光のない瞳に私を映した。
「俺が見てないところで浮気かよ。しかも社内で」
「浮気なんて、そんなんじゃ」
「無邪気に笑顔なんて振り撒いて、気安く触らせて……」
私の顎に、慶太の指がかかり持ち上げられる。
「その顔で、今まで何人の男を誘惑してきたんだろうな」
吐き捨てるように言った慶太に、首を振った。