本気の恋を、教えてやるよ。
#3.どこかが狂ってしまった
*º楽斗side.
「……やけにおせーな」
時刻は六時を回ろうとしている。
稲葉から連絡は無く、遠くに見える筒井の席は空席だ。
遅くなるとは言っていたけど、さすがに連絡のひとつも無いと心配になってくる。
長丁場とはいえ、途中に休憩くらい挟まないのか。というかそもそも、安易に二人きりになって欲しくないから、係での活動なんてのは反対なんだよ俺は。
だけどそんな子供じみたことを本人に言うわけにもいかず、せめて警戒心はしっかり持てと、そう普段から言っているつもりではあるのだが。
「……」
キーボードを叩いていた手が止まる。
駄目だ、集中出来ねえ。
俺はため息をついて開いていたファイルを閉じると、各会議室の予約表を開いた。
そこから、筒井の名前で半日予約が取られている部屋を見つける。
「ここか……」
本当は邪魔したくないけど。
少し。少しだけ、様子を見るだけだ。